はじめに
オーストリアの都市インスブルックは、 人口12万人を抱えるチロル州の州都であると同時に、 近隣のアルプス山脈に点在するスキー場へのアクセス拠点でもあります。
インスブルックからアクセスできるスキー場はオーストリア・アルプスに位置しており、 次のような魅力があります。
- 森林限界超えで見晴らしが良い
- 晴天率が高い
- 固く圧雪されたコース
私は北海道のスキー場も良く行きますが、 ある意味で正反対の特性です。 北海道は降雪量が多くパウダースノーを楽しめる日が多いですが、 雪が降るということは即ち晴天の日は少なくなります。 またフレッシュな粉雪が多いため、 コースは圧雪しても柔らかくなります。
私は2024年末から翌年1月にかけてインスブルックに行き、 周辺のスキー場で滑ってきました。 欧州でのスキーを検討している人に向けて、 記録を残しておきます。
旅行関連情報
インスブルックへのアクセス
インスブルック空港へは欧州各地からフライトが飛んでいますが、 日本から行く場合、 直行便がないのでウィーン空港やフランクフルト空港などで最低1回は乗り継ぐことになります。 乗り継ぎの待ち時間にもよりますが、 今だと欧州行きの国際線が出ている羽田・成田・関空から片道で16〜20時間を見込んでおく必要があります。
インスブルック空港からインスブルック市街地へは5kmほど、 車で10〜15分ほどです。 空港から市街地まではバスも出ていますが、 荷物が多い場合には空港前に並んでいるタクシーを使った方が楽です。 ホテルが多い市中心部までならタクシー代は 15 EUR 程度です。
通貨・言語など
通貨は EUR ですが、 ほとんどの場所でクレジットカード決済が可能なので、 現金は最小限で大丈夫です。
現地語はドイツ語。 オーストリア方言なので標準ドイツ語と多少異なる部分がありますが、 だいたい理解できます。 ホテルや観光客向けのレストランでは英語が通じますが、 ローカルのスーパーマーケットなどではドイツ語しか通じない場合があります。
日本語 | 標準ドイツ語 | オーストリアドイツ語 |
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お店のレジ | Kasse | Kassa |
1月 | Januar | Jänner |
インスブルック周辺スキー場
Nordkette
基礎データ
- インスブルックからケーブルカー/ロープウェイを乗り継ぐと到着
- 総ゲレンデ長 13km
- おすすめ度: なし
コメント
ここは自分では滑りませんでしたが(観光には行きました)、 インスブルックを見下ろす高台に位置するスキー場です。 市内にあるケーブルカー乗り場からケーブルカーに乗り、 その先でロープウェイを乗り継ぐと到着。
リフト2本だけでゲレンデも短いので、 移動時間が確保できるなら他のスキー場に行ったほうが良いと思いますが、 インスブルックの町を見下ろす風景は素晴らしいです。
Axamer Lizum
基礎データ
- インスブルックから路線バス/スキーバスで40分
- 総ゲレンデ長 41km
- おすすめ度: ★★★★☆ (4/5)
コメント
日本語表記だと「アクサマー・リツム」かな。
インスブルックから最も近いスキー場のひとつで、 路線バスもそれなりの頻度で出ています。 写真の奥に見えるのがインスブルックの町並み。
リフトなどの設備は少し古め。 ゲレンデは中級コースがメインで、 私が滑ったときには雪がかなり固く締まっていて、 エッジを十分に研いでいないとスキー板がグリップしませんでした。
Schlick 2000
https://www.stubai.at/skigebiete/schlick2000/
基礎データ
- インスブルックからスキーバスで1時間
- 総ゲレンデ長 25km
- おすすめ度: ★★★☆☆ (3/5)
コメント
「シュリック2000」。 標高2,000m前後にコースがある、 オーストリア・アルプスではやや低めの小規模スキー場。
私が行った日には湿った雪がちらついていて、 雪が重くて大変でした。 標高が低いので、 どうしても気温が上がって雪質は水っぽくなりがち。
圧雪コースでも起伏に富んでいて、 スピードを出すと油断できない感じで楽しめます。 スピード計測できる機械が設置されているコースや、 子供向けに林の中を滑るコースなども用意されています。
初心者向けコースの割合が多い。
Kühtai
https://www.kuehtai.info/ski-area-kuehtai
基礎データ
- インスブルックから路線バスで1時間
- 総ゲレンデ長 47km
- おすすめ度: ★★★★★ (5/5)
コメント
発音は「キュータイ」で、意味は「牛の高山牧場」。 中上級者向け。
アルプスのスキー場はバス停や駐車場はやや標高が低いところにあり、 そこからゴンドラで上ってスキーゲレンデに出ることが多いですが、 ここは町自体がすでに標高2,020mに位置しています。 歩いたらすぐにゲレンデ。
標高が高く気温も低いため雪質が保たれており、 またそれぞれのコースが長く幅広い。 山の斜面を活かしてゲレンデにしてあるので、 広いといってもフラットではなく自然な凹凸やカーブがあります。 子供向けのスキークロスコースや、 フリースタイル用のボックス・キッカーなども設置されています。
Kühtai から無料シャトルバスに乗ると Hochoetz というスキー場に行けます。 こちらは近くに貸別荘がたくさんあり、 自動車で来て長期滞在している家族が多いようです。
雑談
スキーラックを積んだパトカーを見かけました。
Stubaier Gletscher
https://www.stubaier-gletscher.com/
基礎データ
- インスブルックからスキーバスで1時間30分
- 総ゲレンデ長 68km
- おすすめ度: ★★★★★ (5/5)
コメント
日本語にすると「シュトゥーバイ氷河」で、 その名の通り、 氷河の上にゲレンデがあります。 「雪の王国」(Könighreich des Schnees)とも呼ばれています。
主要なコースはすべて標高 2,300m 以上に位置しているため、 気温が低く雪質が良いです。 一つ一つのコースが長く幅も十分にあるので、 滑り甲斐があり、 森林限界を超えているため360度アルプス山脈の風景が楽しめます。
ここは斜度が小さめのコースもあり、 初心者から中上級者まで楽しめます。 ただし初心者向けコースとはいっても、 コースが広く長いので気づくとかなりのスピードになっていることがあるため、 飛ばしすぎないように注意が必要です。
スキー関連情報
スキー場リフト券
スキー場の窓口でリフト券を購入することも可能ですが、 スキー観光客向けに Ski + City Pass というチケットが販売されています。
これを買うと、以下のサービスが利用可能になります。
- インスブルック近郊のスキー場のゴンドラ・リフト
- インスブルック市内公共交通機関(バス、路面電車)
- インスブルック市内からスキー場へのバス
- インスブルック市内観光施設(動物園など)
私は事前にオンラインで Ski + City Pass を購入しておき、 インスブルック到着後、 市内にある観光案内所 (住所: Burggraben 3, 6020 Innsbruck) に行ってチケットを受け取りました。 価格は8日間有効なもので、大人 427 EUR、子ども 214 EUR でした。
スキー場以外に市内観光にも使えるので、 私は1日は市内観光に充て、 子どもと町を回ったり動物園に行ってきまいsた。
スキー場へのアクセス
インスブルック市内からスキー場へは、 バス、タクシーもしくは自家用車での移動になります。 市内からスキー場まで片道45分〜1時間半かかるため、 少人数ならバスを使うのがコスト・手間を考えると良いと思います。
バスは上記の Ski + City Pass を購入すると使える他、 インスブルック市内のホテルに2泊以上するともらえる Welcome Card でも乗車可能です。
スキー場行きのバスは、 場所・時間帯によって、 通常の路線バスを利用する場合とホテル宿泊者向けの専用バスを使う場合があります。 路線バスはグーグルマップでも出てくるので、 それを見て最寄りのバス停を利用するのが良いです。
路線バスのバス停は分かりやすいように標識があり、 また乗り降りが多いバス停には、 次のようなリアルタイム発車案内板があります。

Linie が路線番号、Ziel/über が目的地・経由地、最後の Abfhart が出発時刻です。 出発が近くなると後何分という表記になり、10分以上先だと24時間表記で出発時刻が表示されます。
専用バスは、 まず市内数カ所にある乗車ポイントを回ってスキー場に向かう人をピックアップし、 バスターミナルに向かいます。 集められた乗客はバスターミナルで行き先毎に指定されたバスに乗り換え、 スキー場に向かいます。 この専用バスの乗降場所は掲示が最小限で分かりづらいため、 ホテルのレセプションで場所を確認した方が良いです。 最新のタイムテーブルはホテルのレセプション、観光案内所などで入手できます。
路線バス・専用バスいずれを利用する場合でも、 乗降の際に乗車券を見せる必要はありません。 抜き打ちで検札があった場合にのみ提示すれば OK です。
また日本と異なり、 スキーブーツを履いたまま乗車して構いません。 スキー板・ストックもスキーバッグに収納する必要はなく、 むき出しのまま持っていけます。 路線バスだとスキー板は座席まで持ち込み、 専用バスだと荷室に収納することになります。
スキー板のメンテンナス
硬い雪の上を滑っているとスキー板のエッジの角が落ち、 アイスバーンのような雪面では全くグリップしなくなります。
そうなったらエッジを研いでもらう必要があります。 この作業は日本だとチューンナップといいますが、 オーストリア(ドイツ語圏)では Ski Service(シー・サービス)と呼びます。
町中のスキー用品店に持ち込んでもいいですが、 Stubaier Gletscher スキー場 Gamsgarden ロープウェイ山頂駅にあるスポーツ用品店「InterSport Okay Stubaier Gletscher」に持っていくと、 Express Ski Service として20分以内にエッジ研磨作業を行ってくれます。

スキー以外の情報
観光情報
インスブルックは州都ということもあり、 文化施設やイベントも充実しています。 インスブルックの町からケーブルカーで上ったところにある動物園 Alpenzoo や、 新市街にある音の博物館 AUDIO VERSUM Science Center に小学生の息子と行きましたが、 どちらも楽しんでいました。
旧市街 にも観光名所が多数あり、 また年末年始には Maria-Theresien-Straße という通りでクリスマスマーケットが開催されます。 期間限定のイベントもありますが、 インスブルック観光局 の Web ページをチェックすると見つかります。

買い物
インスブルック新市街の中心に Kaufhaus Tyrol というショッピングセンターがあります。
地下にはスーパーマーケット MPreis があり、 その他にもドラッグストアや家電・衣服などを取り扱うお店が一通り入っているので、 必要なものは、 だいたいここで手に入ります。

宿泊場所
バス移動する場合には、 インスブルック市内中心地のホテルに泊まるのが楽です。
人数も多い場合や子供がいる場合は、 貸別荘 (Ferienwohnung) に滞在するのも便利です。 ホテルのように毎日の清掃サービスはありませんが、 部屋が広くキッチンや洗濯機なども備わっているため、 日常生活に近い暮らし方ができます。
公共交通機関でのアクセスが良いとは限らないので自動車が必要になり、 またスーパーで食材・洗剤などを購入することになるので、 現地の交通・買い物事情が分かっている必要があります。