日本帰国に際してのスイス職業年金(BVG)払出金への課税 への追記記事です。
スイス出国前の年金資産払い出し
年金資産の払い出しはスイス出国前(スイスで課税)、 日本入国後(日本で課税)いずれかのタイミングで行うことになりますが、 スイス出国前の払い出しを認めるかどうかは年金基金によります。
スイス連邦法により、払い出しを認める条件は次のように定められています。
Bundesgesetz über die Freizügigkeit in der beruflichen Alters‑, Hinterlassenen- und Invalidenvorsorge (Freizügigkeitsgesetz, FZG)
Art. 5 Barauszahlung
1 Versicherte können die Barauszahlung der Austrittsleistung verlangen, wenn:
a. sie die Schweiz endgültig verlassen; vorbehalten bleibt Artikel 25f;
Art.5 1a では払い出しが可能になる条件として「被保険者が最終的にスイスを離れること」と定めていますが、 この「最終的」をどのように担保するかの方針が年金基金によって異なるためです。 調べた範囲では、 次の3つの異なる方針を採用している基金があるようです。
- 被保険者がスイスに転出届を提出済み。
- 被保険者が海外で居住を開始済み。
- 被保険者が海外で一定期間以上居住している。
スイスから海外に転出する場合、 転出届 (Abmeldung) の提出は1〜2ヶ月前から可能です (具体的なスケジュールは自治体による)。
最初の方針を採用する年金基金の場合、 手続きを迅速に済ませるとスイス出国前に払い出しが完了します。 しかし2、3の方針を採用する年金基金では、 スイス出国前に年金資産を受け取ることができないため、 日本入国後に受け取ることになり、 日本で退職所得として課税されます。
スイス国内での課税関係
転出届提出後スイス出国前に年金資産の払い出しを受けた場合、 年金基金によって税金が源泉徴収され、 徴収された税金は年金基金の所在地である州に納められます。
これに対して、 払い出しを受けた時点で被保険者が居住していた自治体が徴税権を主張することができ、 それが認められた場合には、 最終的な税金は次のように処理されるようです。
- 源泉徴収された税金は、年金基金所在地の州から被保険者が居住した州に移管されます。
- 課税額はスイス在外居住者向けの税率(Quellensteuer)ではなくスイス国内居住者向けの税率(Steuer auf Kapitalleistungen)で再計算され、 差額が精算されます。
スイス税務会議 (SSK; Schweizerische Steuerkonferenz) が課税基準時点に関する詳細な文書を公開しています。
特に 2.2.1 Altersleistungen の Quellensteuer bei Wegzug ins Ausland が関連する内容です。