日本帰国準備 2

5月31日退職、 7月下旬スイス出国のスケジュールで手配を進めています。

目次

社会保険関係

傷害保険

スイス在住者は医療保険(病気)と傷害保険(怪我)への加入が法律で義務付けられています。

医療保険は個人で保険会社を選択して契約しますが、 傷害保険は原則として雇用者を通じて提供されます。 会社を辞めた場合、 退職日から31日間は従前の傷害保険が引き続き有効ですが、 それ以降は個人で傷害保険を契約する必要があります。

参考: BAG, Anfang und Ende der Unfallversicherungsdeckung

私は退職後2ヶ月程度スイスに滞在するため、 1ヶ月分の傷害保険を手配しなければなりません。 選択肢は2つあります。

  1. 医療保険(KVG)に怪我の保険を追加する。
  2. 雇用者を通じて提供される傷害保険(UVG)を延長する。

UVGの延長は6ヶ月まで可能、 それ以降はKVGに怪我の保険を追加する必要があります [1]。 いずれの場合も保険料は加入者自己負担となります。

医療保険に傷害保険を追加する場合、 怪我の治療に際しても免責額が適用されます。 私の契約だと年間2,500SFrまでは全額自己負担、それ以降は自己負担1割。 一方、 被雇用者向けの傷害保険だと免責額ゼロで治療費は全額保険会社負担となります。

また医療保険に傷害保険を追加する場合、 入院時は大部屋で治療に当たる医師は選択できません。 二人部屋、個室などを利用したい場合には追加医療保険(VVG)に怪我の保険を追加する必要があります。 UVGで二人部屋、個室、医師の指名などが利用できるかどうかは、 雇用主が提供するUVGの契約によります。 法律上は雇用主は大部屋で治療が受けられるだけの保険 (Allgemein) を提供すれば十分ですが、 従業員向け福利厚生サービスとして上位レベルの保険 (Semi-Privat, Privat) を提供する場合もあります。

私は雇用時の傷害保険(UVG)を延長することにして、 その旨を保険会社に連絡。 保険会社から受け取った振込用紙を使って保険料1か月分を支払いました。

家族手当 (Familienzulagen)

就学年齢の子供がいる場合、 チューリッヒ州から子供一人あたり200〜250SFrの家族手当が支給されます。

参考: Kanton Zürich - Familienzulagen

チューリッヒ州の社会保険業務を委託されている SVA Zürich に問い合わせたところ、 原則として受給資格があるのは雇用されている従業員、もしくは自営業者のみとのこと。 無職の場合には年収44,100SFrを下回る場合のみ支給対象で、 私の場合は今年1月から退職までの間の給与・賞与で上限を上回るため、 2023年は支給対象外だそうです。

参考 BSV - Familienzulagen

老齢・遺族基礎年金、傷害基礎保険(AHV/IV)

スイス在住の現役世代は、 スイスの老齢・遺族基礎年金(AHV)ならびに障害年金保険(IV)保険料を納付する義務があります。

雇用されている場合は雇用者が給与、賞与、制限付き株式(RSU)の支給時に一定割合を保険料として天引きして納付しますが、 会社を辞めた場合には個人で保険料を納付します。

チューリッヒ州の社会保険業務を担当している SVA Zürich に問い合わせたところ、 私の場合は1〜5月に天引きされた分で2023年分の保険料は十分なため、 退職後の保険料支払いは不要とのこと。

税金関係

村役場 (Gemeindehaus) の税務課窓口に行き7月末で出国する旨を連絡したところ、 次の2つの手続きが必要とのこと。

  1. スイス国内で納税管理人を立てる。
  2. 2023年分の地方税を予定納税。

納税管理人

納税管理人はスイス国内に住所がある人であれば誰でも構わないそうなので、 元同僚の知人にお願いすることにしました。 税務課でもらった書類に私、妻と納税管理人が署名して提出。

スイスの税務当局は税金関連の書類はスイス国内にしか送付しないため、 私の出国後は納税管理人宛に送ることになります。 知人には、それを受け取って私の日本の住所宛に転送してもらいます。

なおスイスにある銀行口座は日本帰国後も維持可能なので、 納税や還付金受け取りは納税管理人の口座を介さず、 私の口座を使って行う予定です。

予定納税

通常、 チューリッヒ州在住のスイス人ならびに永住権所有者は、 前年度の納税額から想定される連邦税・地方税を予定納税し、 翌年に確定申告を行って精算します。

年の途中で出国する場合、 1月1日から出国日までの所得・財産に対してスイスで課税されるため、 前年の納税額と出国予定日から税務課が概算した金額を予定納税します。 納税課から振込用紙をもらったので、 それを使って指定された予定納税額を振り込みました。

日本では個人所得税は申告から還付まで数週間ですが、 私の済んでいる自治体だと申告書提出から最終的な税額決定まで約1年半かかります。 2023年分の所得に関しては、 例年通りだと次のスケジュールになると思います。

  1. 2024年2月に、会社から2023年支払分の給与明細 (Lohnausweis) が発行される。
  2. 給与明細を元に、私が2024年3月に確定申告を行う。
  3. 税務当局が確定申告書を精査し、2025年8月に税額確定。
  4. 予定納税分との差額を追加納税、もしくは還付。

日本帰国後も2年ぐらいはスイスの銀行口座を維持しておいたほうが良さそうです。

私的契約など

住居の賃貸契約の解約などは粛々と進めています。

スイス居住者である限り解約できない医療保険(KVG)や、 解約時期・契約期間に制約があるものは、 まだ手を付けていません。

これらの契約を罰則無しで解約するには、 村役場に転出届を提出後に発行される Abmeldungsbestätigung(転出届確認書)という書類が必要になります。 転出届は出国一ヶ月前にならないと提出できないので、 手続きはその後で。


  1. 厳密には、KVGは標準では病気と怪我の両方を保障していて、雇用者は怪我の保障を除外して契約しています。 したがってKVGに怪我の補償を追加するのではなく、怪我を補償範囲から除外するのをやめて標準に戻す、というのが正確です。