週に1項目ぐらいのペースで、 子供と「あたらしい にっぽんご」を使って日本語文法の勉強をしています。 私の子供にとって日本語は継承語なので、 大人が外国語を学ぶようにゼロから文法を学ぶ必要はありませんが、 注意深く観察していると理解が曖昧なところが見つかります。
書名 | あたらしいにっぽんご |
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著者 | 教育科学研究会・国語部会編 |
出版社 | むぎ書房 |
ISBN | 978-4838400416 |
先日見つけたのが副助詞「は」の使い方。
助詞「に」「へ」「で」「と」「から」「まで」などに「は」を付け加えると、 意味が微妙に変わります。
- ぼくは 弟と あそんだ。
- ほくは 弟とは あそんだ。
後者だと弟以外に誰か比較対象となる人がいて、 弟とは遊んだけれど、 その誰かとは遊んでいないことを暗示しています。 会話だとその場のコンテクストがあるので誤解することは少なく気づきにくいのですが、 読解では誤読につながる。
そういえば副助詞に関する体系的な説明を見たことがなかったと思って調べてみたら、 現代日本語研究では副助詞・係助詞の区分けを見直して、 その一部を含む「とりたて(助)詞」という品詞を立てるなど再整理が進んでいる。
副助詞「は」の翻訳
しかし「弟と」と「弟とは」のニュアンスの違いを英語・ドイツ語にするのは難しい。 会話なら «Ich habe mit meinem Bruder gespielt.» と単語を強調して発音することで伝わりますが、 文章だと良い訳語が見つからない。
「弟とだけ」なら «Ich habe nur mit meinem Bruder gespielt.» と言えますが、 これだと「弟以外と遊んでいない」ことが明確になってしまう。 「弟とは」は、 他の人とは遊んでいないことを仄めかしているけれど断言はしていないので、 実は正確なところは分からない。
ドイツ語だと「少なくとも」「せめて」といった意味合いの mindestens, wenigstens という単語(英語だと at least 相当)はありますが、 これを使って作文すると「私は少なくとも弟は遊んだ」みたいになってしまいます。 文法的にも意味も間違ってないけど、 子供が日常生活で使うことはない表現。