書名 | アルファベットの正しい書き方 ドイツ語を例にとって |
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著者 | メーナー・エルケ |
出版社 | 上智大学出版 |
ISBN | 978-4324084168 |
概要
現代英語やドイツ語は A, B, C, … というラテン文字を使って書きますが、 その背後にある理屈を解説し、 日本人の典型的な間違い事例をとりあげながら具体的なルールを解説していきます。
解説はブロック体と筆記体が半々で、 その後にドイツ語を母国語とする人が書いた筆記体の手紙が例として収録されています。
感想
非常に勉強になりました。
文字を識別する特徴
実生活で重要なことは、 似た文字列があった場合に、 それを区別できるかどうかです。 たとえばアルファベットのであれば ,,ch" を続けて書いたのか ,,d" 一文字なのか、 日本語なら「末」なのか「未」なのか。
本書ではまず、 文字を識別するための手がかりが、 日本語とラテン文字で根本的に異なることを説明しています。
日本語では文字はマス目の中心に書き、 その中での線の向き、相対的な長さや交差する位置をもとに字を識別します。
一方ラテン文字はベースとなる水平線に対して、 上二階と下一階分のスペースが設定され、 文字毎にどの階を占めるか、 どこから始まりどこで終わるのか、 また各部が直線か丸みがあるか決まっています。
占有位置 | 例 |
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上一階 | a, c |
上一階と上二階 | 大文字, k, l |
上一階と下一階 | p, q |
すべて | f, ß(筆記体) |
私が筆記体で書かれたドイツ語を読む場合、 日本語の文字と同じように識別しようとすると区別がつかないケースが多々ありますが、 意識的にラテン文字の識別ポイントをチェックすると判別できるケースが増えました。
たとえば s は「上一階のみを使い、右に丸みがある」文字なので、 手書きで ɔ こんな風に見える文字が出てきたら s の可能性があります。
英語とドイツ語
英語とドイツ語はいずれもラテン文字を使いますが、 いくつか根本的に書き方が異なる文字があります。
筆記体の形が大きく異なるのは I, J, L, S など。 ドイツ語の I は英語しか知らないと J に見えますし、 ドイツ語の文章中で英語の I の筆記体を使うと未知の文字になってしまいます。
また単独で見た場合には大きな違いがあるようには見えないけれど、 書き順が異なるために筆記体になったりブロック体でも崩れて次の文字とつながった場合に、 全く異なる形になる文字もあることを初めて知りました。
たとえば T は英語では横線が先で縦線が後ですが、 ドイツ語では逆に縦線が先で横線が後になります。 丁寧に書いている分にはどちらも同じ形に見えますが、 次の文字とつながった場合などに全く異なる形になります。