Re: 語学の入門における語彙力とAnkiDroidについて

有野さんの blog 記事「語学の入門における語彙力とAnkiDroidについて」を読んで、 私がドイツ語を学ぶ際に、 どのように AnkiDroid を使っているかを振り返って書き出してみました。

前置き

私は日本生まれの日本育ちで、 社会に出るまでの外国語経験は

  • 学校教育
  • NHKラジオ英語講座
  • 三ヶ月間英語圏に滞在して語学学校に通ったこと

で全てです。 学生時代、英語はどちらかというと苦手科目でした。

2008年に外資系企業の日本支社に転職。 仕事で英語を使わざるを得ない環境になると同時に、 しばらく会社の費用負担で語学学校に行かせてもらい、 仕事での意思疎通も困らない程度にはなりました。

さらに2015年にスイス支社に転籍となり、 今度は現地語であるドイツ語を学ぶことになりますが、 この時点でドイツ語の知識はゼロ。 以下は、ドイツ語の学習で AnkiDroid をどう活用したかという話です。

AnkiDroid の使い方

私がドイツ語の学習を始めた当初は AnkiDroid の存在を知らなかったので、 使い始めたのはドイツ語の入門コースが終わってからだったと思います。 その段階で、本当の基礎単語(数百程度)は学習済み。

1期

最初は日本語→ドイツ語のみで学習していました。 今にして思うと、これは最初から両面にした方が良かったです。

  1. 語学の授業で出てきた新規単語は、毎回全て登録(あまりにマイナーそうなやつのみパス)。
  2. 単語帳を2冊買ってきて、そこにある例文を別デッキに登録。ただし単語帳間で重複しているものは省略。 使った単語帳は「独検対応 クラウンドイツ語単語1600」「効率よく覚えるドイツ重要単語2200」の二冊です。

1のデッキは上限無しで学習、 2のデッキは新規カード10枚程度に制限して学習していました。 2のデッキには本当の新規単語もありましたが、 既に学習済みの単語も多かったので件数に比べて学習負荷は小さかったです。

2期

  1. 語学の授業で出てきた新規単語は、引き続き全て登録(あまりにマイナーそうなやつのみパス)。
  2. 単語帳から作ったデッキに新規単語が無くなった段階で、もう一冊単語帳「Mastering German Vocabulary: A Thematic Approach」を買ってきてデッキ作成。
    • この単語帳がカバーしている単語数は5,000。
    • この語彙数になると日独の単語帳は適当なものが見つからなかったので、英独の単語帳を使いました。
    • 書籍の例文は英独ですが、自分で訳して日本語とドイツ語のカードを作って AnkiDroid に登録しています。
  3. 国と国民のデッキを作成。ドイツ語は「〜人」に相当する単語を作る方法に規則性がないので、個別に覚える必要があるため。
  4. 不規則変化動詞の過去形・過去分詞形のデッキを作成。

ログを見ると1日1時間ぐらいは AnkiDroid に使っていて、 日によっては90分ぐらいかかることもあったようです。 通勤電車の隙間時間などを活用して、どうにか片付けていました。 さすがに60分を超えると辛かったので、 一日に出てくる新規カードの数を減らした方が良かったですね。

3期

ここで単語帳から作ったデッキは一通り終わり、徐々に必要な学習時間が短くなってきました。 日本語からドイツ語だけでなく逆も必要性を感じていたので、 全てのカードを両面対応に作り直して少なくなった学習時間分を充てるように。

  1. 語学の授業で出てきた新規単語は、引き続き全て登録(あまりにマイナーそうなやつのみパス)
  2. 授業以外で見かけた単語を登録するデッキを作成。
  3. 単語帳から作ったデッキを継続学習。ドイツ語から日本語へのカードが一気に増えましたが、初見で問題なく答えられるカードも多いので、新規カードの上限を20か30ぐらいまで上げた覚えがあります。

学習時間は1日1時間程度。

4期

  1. 語学の授業で出てきた新規単語は、引き続き全て登録(あまりにマイナーそうなやつのみパス)。
  2. 授業以外で見かけた単語を登録するデッキに引き続き登録(数は少ない)。
  3. 単語帳から作ったデッキを継続学習。新規カードは尽きて、復習のみ。
  4. 文法問題のデッキ(前置詞の穴埋め、動詞と名詞+機能動詞の相互変換、動詞・形容詞句の名詞化)を作成し、授業や問題集で間違えたものを逐次登録。

年明けからドイツ語の授業はとっておらず(出張などが重なって、落ち着いたと思ったら新型コロナウィルスがやってきた)、 新規単語の登録はかなり少なくなっています。 新聞記事などを読むと知らない単語にも結構出会うのですが、 ここのところデッキに登録できてません(やるべき)。

その結果、新規登録単語が減って復習主体になっているため、 学習時間は徐々に短くなっています。 今はカードが表裏別でカウントして約24,000枚ありますが、 学習時間は毎日30分程度です。

今後

状況も落ち着いてきたので、 今後はまじめに新規単語をデッキに登録する作業を再開して、 あとは「Wörter zur Wahl」というドイツ語単語に関する問題集を問いて、 不正解のものを登録しようと考えています。

「Wörter zur Wahl」は単語の使い分けに関する問題集で、 誤解していると文章の意味を取り違えるような単語を集中的に取り上げています。

  • ein streberischer Schuler (ガリ勉) / ein strebsamer Schuler (勉強熱心な生徒)
  • bildhafte Darstellung (写実的表現) / bildnerisch Darstellung (画像による表現)

カードの作り方

AnkiDroid にカードを登録するときには、 次の方針で行いました。

  • 単語帳から登録する際には、既に覚えているかどうかは関係なくすべて入力し、定着している単語は AnkiDroid 回答時に「簡単」と答えることで出現頻度を減らしました。
    • 登録時点で覚えていても、定着が不十分で、後になって忘れる可能性がある。
    • 本当に覚えているかどうか悩むより、とりあえず心を無にして全部入力したほうが早い。
  • 名詞は定冠詞と複数形を含めて入力しました。ドイツ語では名詞は男性・女性・中性の3種類があり、これが文法的に重要な役割を果たすのと、英語と異なり複数形の作り方が複数あるためです。
  • その他の品詞は原則として短文を登録しました。限定用法がある形容詞に関しては形容詞+名詞も可としました。
    • 単語は複数の意味がありますが、日本語とドイツ語では一つの単語がカバーする範囲が重ならないことが多いので、文脈がないと簡単に複数の正解が出てきてしまうため。
    • 単語帳は使いやすい例文が掲載されていることが多いので良いのですが、授業や実生活で見かけたものは自分で短文を作る必要があって手間がかかります。独和辞典、独々辞典の例文や、ドイツ語のコーパスを検索できる Wortschatz Universtät Leipzig を参考にしています。
  • 学習が進むと、同じ日本語に対するドイツ語文が複数パターン作れるようになってくるので、日本語側のカードに「機能動詞を使う」「Frage に由来しない単語で」などと但し書きを付けています。

モチベーションの維持

AnkiDroid は毎日学習しないと復習カードが蓄積してしまうので、 今日の分は今日片付けようという気になります。 出張のときも、 飛行機に乗ったらまず AnkiDroid を片付けていました。

また私の場合はドイツ語圏に住んでいるので、 実際に言葉を使う機会があるのがモチベーション維持に寄与しています。 単語帳から拾ってきた単語を学習する場合でもまったく無味乾燥な例文というより、 すでに「どこかで見かけた」、 あるいは「以前に言おうと思ったけれど上手く言葉にできなかった表現」と感じることが多いです。

なお Duolingo も試してみたことがありますが、 その時点でかなり単語学習が進んでしまっていたので、 レベルが合わなくてやめました。 最初からやっていたら、もしかしたら長続きしたのかもしれません。